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あめんぼ通信

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

父さんのいる冬を(68歳の出稼ぎ)

 米60万とキュウリ70万を合わせ、農業収入は130万。半年間の出稼ぎ収入100万と、夫婦の年金100万を加えても、年収は330万がやっと。そこから、営農経費50万、保険掛け金40万と家族3人分の生活費140万を使えば、ほとんど手元に残らない。「ここでは、なんぼ頑張っても食っていけない。逆に手間のかかる田んぼや山はない方が楽。この家も田も、おれの代で消えるしかねえんだ」。

 米価2万円台の頃は景気もよく、出稼ぎ収入は月40万を越えた。息子2人の学費も出せた。それが今、「子供がいなくても生活が苦しい」・・・出稼ぎの朝、○○さんは神棚と仏壇に手を合わせ祈った「どうか父さん、けがのないように。神様、仏様。家族を守ってください」。
 そして、願う「一度でいい。健康なうちに父さんと一冬、過ごしてみたい」。空を見上げ涙をふいた。(日本農業新聞より)

 
 東北の雪国では、いつ頃から「出稼ぎ」に出るようになったのだろうか。よく知らないが、昭和30年代に入ってからではなかろうか。昭和20年代はまだ「出稼ぎ」の歴史はないように思う。それでも、新聞に出ていたこの人は出稼ぎ歴が50年を越すと書いてあった。すでに昭和20年代の半ば頃から、「出稼ぎ」の歴史は始まったのかも知れない。それは戦後の復興が始まった頃と時期を同じくする。

 戦前の自給自足の時代には生活ができたのに、戦後、資本主義の勃興とともに「出稼ぎ」をしないと生活ができなくなった。それは最低限の文化的生活という言葉に名を借りた、資本主義の家庭内乱入である。

近所にプロパンガスを買った

近所に洗濯機を買った

近所に扇風機を買った

近所に炊飯器を買った

近所にテレビを買った

近所にトラクターを買った

近所に冷蔵庫を買った

 これらは、ボクがまだ小学生だった昭和35年から昭和40年にかけての6年間に、我が集落に怒涛のように押し寄せた出来事だった。これでもか、これでもかという、新たな家庭電化製品の登場だった。買わなければ最低限の文化的生活ができなくなった。

 買っても買っても次から次に買わざるをえないものが登場してくる。めまぐるしく登場してくる。農業収入だけでは買えないものばかりだった。買う必要のない時代には「自給自足」ができたが、買わざるをえなくなると、その時点で「自給自足的生活」は壊れる。このようにして資本主義の発達とともに自給自足的生活は破壊されていった。
 これらが買い揃った現在、果たして60年前より、文化的生活ができているだろうか。花鳥風月を愛でる精神的余裕があるだろうか。やっと買い揃えたと思ったら、次々に耐用年数の終わりがきて、また一から買い直しの必要に迫られる。これを死ぬまで繰り返す。そして買い直しのサイクルが最近は3~4年間に短縮されている。パソコンやデジカメなど最たる例である。ああもう切りがない。永遠の自転車操業。このようにして人は資本主義のしもべとなる。とにかく、生きることにも、死に行く時にもカネがかかりすぎる。しかし人はもう、そのシステムの中に取り込まれてしまい、脱出することすら不可能になっている。

パソコン・・・欠かせない

デジカメ・・・欠かせない

車・・・・・・欠かせない

家・・・・・・築56年がくるので、次から次に修理箇所が出てくる。ぐらぐらしていた母屋の座板をやりかえ、台所の座板をやりかえ、応接間の座板をやりかえ、今また屋根瓦の吹き替えを迫られている。もうや~めた。先送り、先送り。半端でない200万ほどのカネが必要である。
 その前に下水道の稼動。トイレの改修、下水道の各戸負担金で100万ほどの出費が緊急に迫られている。その上、ライフラインに下水道料金が加わってくる。もういい加減にしてくれ。際限がない。働いても、働いても、我が暮らし楽にならず。

 こうやって人生が終わっていくんだろう。最低限の文化的生活を追い続けて、追いかけっこしながら。


20071121231843.jpg

(今日の夕飯)
親子どんぶり・・・昨日の残りがあった
味噌汁・・・・・・・・朝の残りに卵を入れた
サラダ・・・・・・・・・いつものレタスに生ハム2枚

 


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コメント

何だか気持ち解ります

きりがないです。
子供は周りと自分を比べて何を普通と思うのか、普通は、普通は…と連呼し。
生きてるだけで大変です。でも農作物を作ってくれる農家の方が居てくれるお陰で美味しい物食べれてるのに…それでも輸入にかなりを頼る日本。飽食、無駄、贅沢…見直さなくてはと思います。

  • 2007/11/23(金) 11:57:09 |
  • URL |
  • うさぎ #Wbk1lLzE
  • [編集]

はじめまして

農業は本当に大変ですよね。
僕も今年から農業をしに岐阜に来たのですが、
専業農家として食べていくのはまだまだ先になりそうです。

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プロフィール

水田祐助

Author:水田祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在55才、農業歴19年目。農業形態は野菜とハーブのワンパック宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ30羽。25年ほど農業とは無縁だったが、ボクが子供の頃は、家は葉タバコ農家だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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