電柵に新しいバッテリーをつけて、また電流が流れるようになってからは、イノシシに入られていない。漏電したら意味がないので、草が伸びていないか電柵の周囲は定期的に確認している。こんなことにも一手間かかる。
イノシシが狙うのは、当地では今の所サツマイモだけだから、サツマイモ畑を電柵で囲うだけでよいが、ちょっと県北に行くと、稲はもちろんのこと、
(1)ジャガイモ
(2)ナンキン
(3)ニンジン
も囲う必要がある。もちろん、自分の田んぼでもこれらの作物に油断はできないが、こういうことは苦手作業なので、サツマイモ以外は放任している。1度、被害にあえばせざるをえないだろうが、こんなことが年々増えていくと、農業をすることがむなしくなる。
当地ではまだ、
(1)サルの被害は出ていない→はぐれサルを見た人は、集落にすでに何人もいるが、野菜の被害はまだ聞いていない。
(2)シカの被害も少ない→キュウリ、サツマイモの葉をやられたことがあるだけである。
(3)タヌキ→野菜や苗床をよく踏み付けて歩いているが、イノシシのように、土の上でころげまわったり、掘り返したりしないので、さほど被害はない。というか、タヌキの好物はすでに作付を中止している。つまり、イチゴ、マクワウリ、トウモロコシは止め、自給用のスイカとトマトだけは全体を防御ネットで囲んで作っている。
(4)カラス→タヌキと同じ作物に被害があり、他に果樹も被害がある。
(5)イノシシ→今の所、サツマイモだけである。今年、エンサイを掘り起こされていたが、被害は一部だった。
自分のように害獣防御がとても負担に感じる農業者は、農業の継続は年々厳しくなっていく。
以下、2004年、10月の通信です。
近年、市街地まで進出してきて、とどまる事を知らない害獣の被害・・・。米、野菜、果樹で経済活動をする我々農家にとって、防御はかなりの時間と手間とカネがかかる。だから「駆除」してもらう必要がある。それなのに、
(1)捕まえたイノシシを山奥に逃がしたり・・・
(2)ため池に落ちたシカを、わざわざ県の職員が出動して、救出作戦を展開して、それを人里離れた山中に放すという税金の無駄遣いをしたり・・・
(3)民間非営利団体(NPO)の、日本ツキノワグマ研究所(広島県)が広島県庁を訪れ、捕獲したクマを山奥に返す「奥山放獣」を進めるなど、必要以上の駆除を行わないよう求めた・・・
立場を異にすると、これだけの見解の相違が出てくる。我々農家の立場とは正反対の行動をとられてしまう。イノシシ、シカ、タヌキ、サル、クマ、カラス・・・これらが数多く出没する山村では、野生動物との戦いに、かなりのエネルギーを消耗してしまう。こうなると農家の技術力や販売力以前の問題で農業が維持できなくなる。自分のように、害獣防御の柵を作るような仕事を特に苦手とする不器用な人間にとっては、山村で農業をすることはできない。地方都市近郊だから、まだ自分は農業ができている。
先日、イギリス議会で「キツネ狩り禁止」の法案が通過した時に、農家と機動隊が衝突して流血騒ぎになったのをテレビが大々的に報道していたが、立場が変わると、野生動物に対する認識がまるで異なる。
先日、イギリス議会で「キツネ狩り禁止」の法案が通過した時に、農家と機動隊が衝突して流血騒ぎになったのをテレビが大々的に報道していたが、立場が変わると、野生動物に対する認識がまるで異なる。
日々、大量のウシやブタやニワトリが「肉」として、大量に処刑されているのに、なぜ、クマやサルやイノシシやシカが保護されなければならないのか・・・。農業はますます「少数派」になっているから、多数決になれば、いわゆる「動物愛護団体」等には負けてしまう。でも動物愛護団体の人が、ウシやブタやニワトリの肉を食べていないかと言えば、それは考えられない。
「家畜」は平気で殺しても、「野生動物」は殺してはいけないと使い分けして考えているのだろうか。とにかく、農業の現場を知らないから、平気で反対する。
野生動物が「肉に見えた」のは、2000年以上の人類の歴史であり、わけのわからない「動物愛護団体」等の出現の歴史はまだ40年ほど・・・。
環境省はツキノワグマを「絶滅の恐れのある地域個体群」に指定しているという。廃村や人里付近に生息し果樹や残飯などをエサにする集落依存型であるという。
イノシシやシカ、サル、タヌキ、カラスも同じく集落依存型である。これらはツキノワグマと違って、加速度的に増え続けている。
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