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あめんぼ通信

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

新しい「農」のかたち

 若い時代・・・もう戻りたくないなあ。結構、厳しい人生だったから。
 今は、平凡な日々を送っている。大半は家と田んぼの往復である。そんなに稼いでいないが、すでに家族4人が働いているので、自分の収入がアルバイト収入程度でも我が家の生活はまわっていく。農業収入は誰もそんなもんじゃないかなと思う。手取り(純売上)150万以上を稼がないと生活がまわっていかないのなら、農業への転身は考えない方がいいと思う。

 
 普通にこつこつと農業をやって、できた野菜を青空市や道の駅、朝市に出荷して、それで手取りが150万ほどになるなら、現役世代の農業人口はすぐに現在の10倍ほどに増える。手取りが100万にもならないから、農業をしたくても誰も農業を選択できないのである。

 
 ブログランキングの「転職・キャリア」のランキング第1位は、『新しい「農」のかたち』というブログであり、ブログの紹介に、『「農」の魅力って何? 「農」の可能性って何? 新しい「農」のかたちをみんなで追及していきましょう。』と書かれている。

 

自分が考える農業の魅力は

(1)毎日、土の上を歩くことができる。

(2)空や雲を時おり眺めながら、お天道様の下で働く仕事である。

(3)小鳥のさえずりや、山里の四季の変化を楽しむことができる。

(4)人の目顔を気にする必要がない

(5)誰に責任転嫁することもできない独立自営業の仕事である。

 

 自分が考える農業の可能性は

(1)資本主義が発達すればするほど、農業は割りの合わない仕事になる・・・集落の50年の農業をみてくれば、一目瞭然である。

(2)「資本主義と農業経済」のような本の中で、農業は高度資本主義のもとでは、ほとんど利潤を得る(生み出す)ことができない産業であることを、理路整然と説明している本があると思う・・・自分が読んでいないだけ。

(3)ここ50年のニワトリの歴史、ここ50年の人間の歴史、を見れば、今後の農業の推移も大方予想ができると思う。つまり、

 ニワトリ・・・20~30羽の庭先養鶏が、地面から離されて、身動きできないケージで何十万羽単位で飼われるようになった。

 人間・・・田んぼの地面から離されて、組織の一員として企業に勤めないと生活ができなくなった。

 今後の農業・・・大きく二極化される。一つは、趣味や癒しのための定年帰農型農業と、企業が進出した企業農業である。そして現役世代の農業も、定年帰農型農業か、大型投資スペシャリスト型の企業類似的農業に二極化されていくと思う。

 

 自分が考える、新しい「農」のかたちは

 都市生活者に直接お届けするワンパック宅配は、17年前の当時としては、とても斬新な農業形態に思えた。これこそ、新しい「農」のかたちと思った。しかしこのワンパック宅配は、

(1)10年程の間に家族構成が変化して、10年を超えて続けてもらうのは難しい。

(2)新たな顧客の獲得が難しい。

(3)家族構成が少なくなり、ハクサイ1個、ナンキン1個、タマネギ1キロ、ジャガイモ1キロ、サトイモ1キロといった、生産者としては最低限の単位が、消費者からみると、その半分にしてほしいという要望も出る。小さくすればするほど、生産者は仕分けが多くなり、送る箱のサイズもイメージできなくなる。

(4)当初に決めた野菜の単価は十年一日のごとく、アップは難しい。自分の場合はすべて17年前の価格から全く変わっていない。

(5)完全無農薬でもいいが、それを消費者が理解してくれて、失敗して送ることができなくても(特にアブラナ科野菜)、現物代金を頂けるシステムでないと、それは固守できない。

(6)生産者から見れば安すぎる。消費者から見れば、送料も負担しているし高過ぎるというふうに、お互いの間に溝ができやすい。このギャップをどうするか。

(7)ワンパック宅配の生産者から考えると、野菜単価は、通常のスーパー価格の2倍くらいでないと、なかなか採算は合わない。

(8)だから、ワンパック宅配を選択する生産者が増えない。ワンパック宅配を始めても、いつの間にか農業形態がスペシャリスト型に変わっている。

 

 現役世代の農業にとって、経済を抜きにした安全や環境は考えられない。まず生活が成り立っての、安全や環境なのである。安全や環境を求めるなら、生産者のリスクを消費者が保障する必要がある。でもそれをしようとすると、生産者と消費者の「緩やかな関係」が保たれず、ミクシイ的な排他的(簡単に出たり入ったり覗いたりできない関係)な、ある種のステイタス的な関係になってしまいそうである。

(注)ミクシイのことはよく知らず、グーグルで検索したら、完全招待制のネットワークのように書かれていたので、排他的と解釈しました・・・→間違った解釈かも知れません。

 

 結局のところ、日本の農業は、企業が支えるようになると思う。個人農では支えきれないくらいすでに衰退している。 
 現役世代の農業は、高度資本主義の下では、ますます経済的に成り立たなくなり、趣味や癒しのためにする定年帰農型の農業がとっくに個人農の主体になっている。


 新しい「農」のかたち・・・18年目の自分にも全く見えてこない。


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プロフィール

水田祐助

Author:水田祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在55才、農業歴19年目。農業形態は野菜とハーブのワンパック宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ30羽。25年ほど農業とは無縁だったが、ボクが子供の頃は、家は葉タバコ農家だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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