あめんぼ通信

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

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ライフラインの攻防 (2)

 すでに家族4人全員が働いているが、4人の中では自分の収入が断トツに少ない。今の農業のおかれている状況が象徴されるような事例である。子供が働き出したら、でも大分違うんじゃない・・・と思われるかも知れませんが、自分の支出が減るわけではない。今まで、子供に関する費用は全て妻が支出していて、ボクは、野菜以外の食費とライフラインの支出を追っかけていただけだから。

 
 現代のライフラインシステムは、自然に対して敵対的、もしくは自然を拒絶するシステムである。たとえば人糞尿は50年前は貴重な肥料だったが、50年後の現在はあべこべになり、産業廃棄物である。このコペルニクス的価値観の転回が、個々人の費用負担となり重くのしかかる。そしてこのライフラインシステムは50年前まではほぼ永久的であったのに、現在のライフラインシステムは「耐用年数」という新たな無駄ガネを背負う。そして、このシステムに依存する限り、何十年かおきに必ず負担を迫られる支出である。それは、システムの使用料に転嫁され、知らず知らずの間にベースアップしていくのである。とにかく、現代のライフラインシステムの元で生活していくには、一にも二にもカネが必要である。人はいつまでも若くはない。いつか、働きたくても高齢で使ってもらえない時代が誰でもやってくる。その時でも、生きるための最低限の生活費(食費とライフラインの支出)が決して減る事はない。

 電話代(自分は携帯は持っていない)、電気代、新聞代、NHK受信料、プロパンガス代、灯油代(冬季のストーブ)、上水道代、下水道代(数年後)、国民健康保険料、国民年金保険料、生命保険料(月に2千円の掛け捨て)、火災保険料(年間4万円ほど)、固定資産税(年間5万円ほど)、車両関連費(農業用軽四のみ。経費で落ちる)、冠婚葬祭費・・・


たった50年前までは、支払っていたライフラインは電気代だけだった。文明とは進歩とは、このように、固定的な支出が雪だるま式に増え続けていく社会のこと。50年前まで、農業で自給自足できていたのは、これらライフラインの支出がほとんどなかったことによる。

 
 大都会、神戸の大震災でも、山国、新潟の大震災でも、同じくライフラインの復旧が取り上げられた。これはつまり、大都会でも山国でも社会システムが全く同じであり、単に住んでいる場所が違うというだけである。
 
 雪の積もる北国の山村では、その環境に即した社会システム(ライフライン)であった方が復旧が早いと思えるが、時代がすでにそれを許していない。全国津々浦々まで同一という時代である。50年前には、上水道はなく川の谷水か山の湧き水を利用し、もちろん下水道はない。人糞はタゴで担いで田んぼの野菜の大切な肥料になっていた。プロパンガスなどなく、台所に、「クド」や「風呂の焚き口」があった時代である。。つまり、システムの導入にほとんどカネのかからない、自然に即したライフラインが稼動していた50年前までなら、もう少し早く元の生活に戻れたかも知れない。
 
 彼らのおじいさん、おばあさんの時代には、雪国の雪国に適した生活システムの中で、ゆったりした時間が保たれていたはずである。そして仮に、80年前に今回と同じような大地震に遭遇しても、「寝る場所」さえ確保できれば、何とか、翌日から以前と同じような生活ができたと思える。そして、「炭焼き小屋」のような、移動式の簡単な作りが、どこぞかしこぞにあったと思うから、夜露はしのげただろう。現代という時代は、「家のシステム」もバカ高い。掘っ立て小屋に住めるなら、自然災害の負担は軽い。

山国で生きてきた人は、山国を脱出したりしない。風景や草木までもが、自分のアイデンティティそのものだと思うから、いつかまた帰ってくると誓う。そして、年老いた人たちは、自分たちがまだ幼かった頃の生活様式を思い起こしながら、できうるならば、あの時代に帰りたい・・・と涙したのかも知れない。「日本中どこにいても同じライフラインや家というシステム」の中に組み込まれ、それから脱出して生きていく「術」を現代人はなくしてしまった。   

現代のライフラインシステムを、「快適」とか「衛生的」と思っている人も多いのかも知れない。しかし、このシステムは本当に近代的であり、文明の象徴であり、50年前のシステムよりすぐれているだろうか。誰もが、もう一度疑ってみる必要があると思う。今回の山国での大震災で、このことを改めて考えさせられた人も多いのではなかろうか。



 近い将来の人間は、現代のライフラインシステムを「反自然的」とか「エネルギーの浪費」と考えて取り壊し、新たなライフラインシステムを構築していくかも知れない。自分は、現在のライフラインシステムは「ファシズム」だと思う。なぜなら、このシステムには他に選択肢がないのだから。例えば、下水道を例にとると、ひとつの集落内に、単独合併浄化槽利用の人がいてもよいし、自分で田畑に施す人がいてもよいし、汲み取りを衛生業者に依頼するいる人がいてもよいし、メタンガス発生装置を作り、ガスと肥料(メタン菌液肥)を自給するというシステムを利用する人がいてもよい。しかし下水道が集落にくると、下水道以外のすべてのシステムが否定され、下水道に統一の道を歩まされる。


 現役世代の人がサラリーマン社会をドロップアウトして田舎へ移住して生活したいなら、

(1)集落の崩壊が始まっている過疎の山村を選択して

(2)イノシシやシカなどの害獣の出没で、野菜がきわめて作りづらくても、なんとか、過疎の山村を選択して

(3)サラリーマンを止めることは、現代社会とは違ったシステムの中に自分を置いたことになる。ライフラインからの脱却を試み、「農業に依存しない田舎暮らし(野菜は売らずに、自給度を高めるためだけの農業)」を模索できる場所は、過疎の山村にしかないように思う。


(新潟で大地震があった時に書いた作文ですが、今回、少し書き足しました)

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プロフィール

水田祐助

Author:水田祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在55才、農業歴19年目。農業形態は野菜とハーブのワンパック宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ30羽。25年ほど農業とは無縁だったが、ボクが子供の頃は、家は葉タバコ農家だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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