あめんぼ通信

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

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つい先日のような15年前

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 5月連休明けの今日からまた出荷が始まった。久しぶりの出荷なので、ちょっと緊張した。出荷の日は5時半頃に起きるが、まだスイートバジルの出荷が始まらないので、今日は6時半に起きた。出荷の日は、朝食は食べずに田んぼに行く。野菜はできるだけ早朝に収穫しないと、その後の日持ちが違う。

 
 今日は、地元の顧客にお願いをすることがあった。ちょっと言い出しづらかったが、仕方がない。「今後は配達ではなく宅配便で送らせて欲しい・・・」と。

 
 地元の顧客はすでに2軒しかなかったが、その内の1軒から、宅配を中止したいというメールを頂いていた。どちらの方も同じ団地であり、15年間に渡って、月に2回、ほとんど休まず購入してもらっていた。でも1軒の方は2人の子供さんが親元を離れ、夫婦2人暮らしとなり、ご主人が趣味で野菜作りを始められていたにもかかわらず購入してくれていたので、止められるのは致し方なかった。今まで15年間も購入し続けてくれた2軒だから、たとえ1軒になっても、持っていかせてもらえばよいのだが、自分の気持ちがそういう方向に向いてくれなかった。

 
 止めたいというメールを頂いてから、ああ、15年も購入してくれていたんだと、改めて思い直した。

 この団地を軽四で「引き売り」していた光景が、まだ思いだせるくらいの時間の経過なのに、あれからすでに15年が経過している。あの時はまだ30代だったのだ。

 
 引き売りでは通常、買ってくれても1~3品のお客が多いのに、1軒の顧客は、選びもせずに6品以上買ってくれた。そして、1度の出会いですぐに「野菜会員」に入ることを承諾してくれた。今回止められた顧客は、その方が紹介してくれたご近所の人であり、すでに他の自然食品店の野菜を定期購入されていたのを止めて自分の野菜会員に入ってくれた方だった。

 
 この団地は1000軒近い大団地だった。引き売りしていても、前回の引き売りで買ってくれた顧客の家がすぐには覚えれなかった。結局この団地を3ヶ月ほど引き売りして、十数軒の野菜会員を新たに獲得することができた。その十数軒を第1,3週のグループと第2,4週のグループに分けて、毎週1度はこの団地に配達に来るようになったが、1年後くらいには半分になり、その後は2週間に1度だけ来るようになった。そしてもうかなり前から、この2軒だけになっていた。大きな団地であるし、新しくこの団地に入られたり、個々の家庭の状況も刻々と変わるだろうから、2年に1度くらいはまた、引き売りを繰り返してもよかったような気もする。しかし、そういう気持ちが起きなかった。
 
 
 自分の場合、引き売りは相当のエネルギーがいった。1軒、1軒、玄関先のチャイムに向かって「野菜はいられませんか」と声をかけてまわったが、玄関に出てくれる人は少なかった。体力的、精神的に2時間ほどが引き売りの限度だった。よく売れても7千円ほどだった。たいていは5千円ほどしか売れなかったように記憶している。朝収穫して、仕分けをして、昼食をとり、昼から売りに歩いたが、終わって家に帰れば3~4時頃になる。その後また田んぼに出る元気はなかった。だから、1日仕事であり、それで5~7千円では、採算に合わない。3軒の顧客に配達すれば7千円ほどになるから、この方が時間的にはるかに短時間であるし、収穫、出荷ロスも出ない。引き売りの時は、売れ残りもかなりあったから、収穫、出荷ロスも大きかった。



 引き売りはスタート時点の丸2年ほどしかしなかった。その2年間に、30軒余りの野菜会員を獲得することができた。家の近くの団地からまわり、だんだんと距離を延ばし、ここの団地は我が家から最も遠い団地だった。最も遠いといっても20~25分ほどだから知れている。家の近くにこのような大団地が点在していたということは、スタート時に野菜会員を獲得するには、かなり有利だった。

スタート時に野菜会員を獲得するには、引き売りしながら顧客を見つけるくらいしか方法はないものである。「引き売り」は3日すれば慣れる。野菜を作っても売れなければどうしようもないから、どうしても野菜会員を獲得する必要があった。


 とにかく自分は、農協や市場が相手にしてくれるような、寸法や重量や外観という規格の定まった野菜を一定の箱数出すということに自信がなかったし、自分の農業のイメージに合わなかった。特定の個人にしか売りたくないということが、自分の中での大前提だった。

 
 町内の団地にも顧客があったし、隣町の団地にも顧客があったし、お隣の備前市にもかなりの顧客があった。でもいつの間にか終わっていた。しかし、それぞれの団地や地域に顧客ができたのは、その時期、その時期に、自分をバックアップしてくれた「特定の顧客」とめぐりあえて、その方たちが紹介してくれたおかげである。そして2~3年の周期で、特定のそういう顧客とめぐり合うことができた。今は会員でなく、行き来することはなくなっていても、とてもありがたい存在だった。

 
 十数年の歳月の間に、気がついてみたら、地元の顧客は2軒だけになっていた。ここ4年ほどは、この2軒だけが配達で、後は全て宅配になっていた。
 何か、永遠に続くように思っていた。多分、こういうきっかけでもなければ、今までの15年間をふりかえることもなかっただろう。


 不思議と残念な気持ちがおきない。ただ、感謝の気持ちだけである。でも、この宅配中止の申し出のメールで、自分の中の長い静寂が突然崩れだし、「配達はやめて宅配だけにしよう」という気持ちが始めて目覚めた。このことで、ご近所同士のお二人のどちらにも、迷惑をかけてしまったような気がする・・・。

 
 今後Kさんには、1回につき送料800円というご負担と、当日3時~4時の配達ではなく、翌日午前中の宅配ということになった。15年もワンパックを購入し続けてくれた顧客だし、家から20分ちょっとの距離だから、これまで通り配達させてもらえばよいのだが、自分の中の気持ちがいかんともしがたかった。


 自分もこの先いつまで、ワンパックを続けているだろう。いつか終わりがくる。それは自分で打ち出さないといけないかもしれないし、他力かもしれないし、周囲の状況によるかもしれない。

 
 やめられた方にも、引き続いて購入してくださる方にも、どちらの方にも、15年間の感謝の気持ちを作文にしようと思った。


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プロフィール

水田祐助

Author:水田祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在55才、農業歴19年目。農業形態は野菜とハーブのワンパック宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ30羽。25年ほど農業とは無縁だったが、ボクが子供の頃は、家は葉タバコ農家だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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