液肥は作るのは簡単だが、施す時が重労働である。でも、有機質肥料は一般に、作る時も施す時も両方とも重労働である。つまり液肥なら、労力は半分ですむ。
市販の鶏糞を買って施す場合でも、化学肥料を施すことに比べたら、かなり重労働である。それに、市販の鶏糞は、何十万羽単位のケージ飼いのニワトリの鶏糞だろうから、大量の消毒剤や殺虫剤や抗菌剤が含まれている可能性が高い。化学肥料より危険ではなかろうか。ボクも市販の鶏糞を使っていた時代もあるが、何か不気味に感じて1年ほどで使うことをやめた。
現在の液肥の原料に使っている「ぬか」は地元のヌカである。ヌカの肥料成分は主にリン酸肥料だが、窒素分も含まれている。しかし、ヌカだけの窒素分では、窒素肥料が足らない。そのために、ナタネカスも投入している。ナタネカスはたいてい輸入物であり、遺伝子組替え作物の可能性もあるが、ナタネカスの他に自分は窒素肥料を知らない。自分のトリ小屋の鶏糞を入れてもよいが、この鶏糞はすでに鶏糞というよりも、雑草等の大量の有機質素材に付着している状態であり、鶏糞だけを取り出すことはとても不便である。加えて、ボクのニワトリは「菜食主義」で育てているので、たぶん、施しても、窒素肥料効果は少ない。鶏糞の肥料効果が高いのは、魚粉とかトウモロコシくず、ダイズかす等の濃厚飼料をたくさん与えるためであり、購入エサを極力少なくしているボクのニワトリの糞は窒素分は少ないと思う。
液肥は半分使ったら、残りの半分は種菌として残して次を仕込んだ方が、次の出来上がりが早いと書いたが、ボクの場合、半分使う前に、少し使っただけでも、適当な量のヌカとナタネカスと水を補充して、常時、液肥タンクがいっぱいであるようにしている。液肥タンクは1日1回は、竹の棒で混ぜる(これが、自分の場合はなぜか楽しみになっている)が、混ぜた時の感覚で、ヌカの量が多くて混ぜにくいとか、逆に、水の方が多くて薄すぎるとかの「勘」がつかめてくる。その時は、水を増やしたり、逆にヌカを投入したりする。ヌカとナタネカスの比率は、重量換算で4対1くらいの割合を目安に考えたらよいと思う。ボクの場合はナタネカスを少なくして5対1、もしくは6対1くらいにしているが、できた野菜の結果や途中経過を見て、あれ、これは窒素分が足らなかったなあ・・・というのが、目に見えてわかることがある。そんな時には、ナタネカスだけを液肥タンクに補充する。
サツマイモのように、窒素肥料が多いと「つるぼけ」するような作物にはナタネカスを途中から入れない液肥を作っておく。500リットル入りの液肥タンクは2つあるので、使い分けている。それとは別に小さな50リットルタンクも8つ用意している。この50リットルタンクは近くの食糧品会社から、ただでもらっているが、中国から輸入されるマッシュルームのような食糧原料が入っていたものらしい。たくさんもらうと産業廃棄物になるので、8つもあれば、自分の場合は十分である。500リットルタンクで仕込みが完了した液肥をすぐに使用する作物が無い場合に、50リットルタンクに入れ替えて保存する場合もあるが、50リットルタンクの方は主に、窒素分多目の液肥を作っておき、作物の途中経過を見ながら、窒素分が少ないと感じた時に追肥する場合に利用している。
液肥は1回の散布で「8荷」までしか担がない。30リットル入りのタゴに天秤棒を渡して、肩に担ぐ。ボクの場合は、前後に20リットルずつ合わせて40リットル(これが1荷)くらいしか担げない。団塊の世代の方なら、故郷の田舎で「下肥(液肥)担ぎ」しているのを、子供の頃に見られていたのではないでしょうか。今は田舎でも「下肥担ぎ」など全く見ることがなくなった。
液肥を施したら、井戸水をポンプアップして、約10倍に薄めるか雨を待つ。急いで黒マルチをする場合などは、雨を待てないので、朝ポンプアップしたら夕方に、夕方ポンプアップしたら翌朝に黒マルチをする。液肥は雨で流亡しやすいので、黒マルチと液肥はセットみたいな使い方をしている。黒マルチは農業現場から出る大量の「産業廃棄物」であるが、これほど便利な資材もない。
液肥を元肥ではなく追肥として施す場合には、施した後すぐに、水で10倍ほどに薄める。液肥は濃いので、薄めなかったら、作物には強すぎて枯れ死する。ためしに、あぜ際の雑草に施して、翌朝どうなっているか確認してみるとよい。たいてい枯れ死している。
液肥の種菌は1度もらってくれば、何回ももらう必要はない。後は何年でも、ヌカとナタネカスを補充していくだけでよい。