昨日、液肥を作った。ボクが使う肥料の90%は、500リットル容器2つで作る「メタン菌液肥」である。人間の「へ」のことをメタンガスとも言うが、つまり、動物糞(人糞を含む)の中で活躍するのが「メタン菌」である。
今から50年ほど前には、人糞や動物糞からでるメタンガスを、細いチューブのようなものを利用して集め、ガスを代用していた農家もあるらしい。しかし、すぐにプロパンガスに押されて、ほとんど使われなくなったらしい。
今また、自然エネルギーが見直される時代になり、一部の先進的な有機農業家が、「メタンガス発生装置」なるものを手作りして、プロパンガスの代わりにメタンガスを台所の火の元に活用しているらしい。そして、その「廃液」を野菜や米の肥料に利用している。
その「廃液」を200リットルほど、先進農家からもらってきて、それを「種菌」として液肥を増やす。先進農家を知らなくても、各県の畜産試験場等では、たいていメタンガスの試験やそれを利用した肥料作りなどをしているはずだから、試験場でもらってもよい。
もらってきた「廃液」を500リットル容器(ホームセンター等で1万三千円ほどで売っている黄色の容器)2つにそれぞれ100リットルずつ入れる。その中に、米ヌカ4袋(15キロ入り)とナタネカス1袋(20キロ入り)をそれぞれの容器に入れ、その後、容器がいっぱいになるまで水を投入して、よくかき混ぜると、メタン菌液肥の仕込みが完了である。
夏場なら10日ほどで仕込みが完了するが、冬場なら3ヶ月ほどかかる。メタン菌は水温が35度の時、最も活動をするらしい。
ボクは3反(30アール)ほどの作付けであるが、500リットル容器2つで、どうにかまにあっている。半分(250リットル)使ったら、残りの半分は種菌として残して、すぐにまた仕込む。半分を種菌として残すと、次の出来上がり(仕込み完了)が早い。
ヌカは農機具店などが置いている「コイン精米機」のヌカを無料でもらっている。ナタネカスだけ買っている。だから、肥料にかかる費用はナタネカス代だけである。年間で6~7袋使うだけだから、3~4千円で足りる。
肥料にはカネを使わない。そして、肥料は自分で作ることが、安全性の見地からも特に大切ではなかろうか。この16年間、自分も肥料に関しては幾度となく変遷を重ねてきた。
(1)農業をスタートした頃は、近所で牛糞をもらって、くそまじめに「堆肥作り」なるものを続けていた。重労働だったので、3年くらいしか続かなかった。
(2)その後は、市販の鶏糞を買うようになった。
(3)その後、地域の酪農家から、2トン車いっぱいが6千円ほどの価格で、できあがった牛糞堆肥をもってきてもらうようになった。
(4)その後、ニワトリをたくさん飼っている友人に、鶏糞をもらいにいくようになった。
(5)その後、農業の師であるKさんと出会い「メタンガス発生装置」から出る廃液を肥料として利用することを学んだ。Kさんが言われるには、50年ほど前に、家で購入していた「家の光」に出ていたので、どういうものか理屈はわかっていたので、それを思い出しながら独力で作ったと言われる。
メタン菌液肥に出会えてから、身体が随分と楽になった。そして、以前よりずっと農業が楽しくなった。そして、以前より格段に安全性がレベルアップしたと思った。そして、野菜の味も向上した。
液肥とは、味噌作りや梅干作りやラッキョ酢作りと同じで、仕込んだら、後は寝て待つ。「果報は寝て待て」である。もう幾つ寝ると液肥が完成・・・♪。
自分にとって液肥とは、まさに農業が変わったと思える革命的なできごとだったが、ボクの最もよい方法が、あなたにとっても最もよい方法であるとは言えない。その理由は、
(1)ニワトリをたくさん飼っていて、鶏糞がいくらでもあるなら、わざわざ液肥を作る必要もない。
(2)近くに、いつでも利用できる水がなければ、実際問題として液肥作りはできない。
(3)ヌカがいつでも無料で、もしくは、ごく安価に手に入る状況が望ましい。
(4)液肥は作る時は簡単だが、施す時にはタゴで担いで施すので、これがかなり重労働。楽しく担げるかそれとも負担と感じるかは、人それぞれである。最初は負担でも後で楽しくなることもあるし、その逆の場合もある。
(5)液肥は施した時「とても臭いにおい(人糞のような臭い)がする」ので、田んぼのそばに家があるような場所では使えない。ボクの場合、最も近い人家から直線距離で300メートルは離れているので、そこまでは臭わない。